観光産業のこれから
『 観光産業のこれから 』 2020年5月号 大野 尚
ダーウィンの
「強いものが生き残るのではなく、変化対応出来るものが生き残る。」
という名言、そもそもダーウィンは言ってはいない。
その辺のところは置いておいて、実際にガラパゴス島に行ってみて
海で泳ぐイグアナを見た時は、確かに陸地に食べるものがなくなれば
海に潜って海藻を食べるようになったからこそ、生き残っている
という事を肌身で感じました。
新型コロナウィルス感染拡大によって、一番大きなダメージを
受けているのが観光産業です。
航空・鉄道・バス・タクシーやハイヤー等の運輸事業、ホテル・旅館等の
宿泊事業・その手配を行う旅行事業、飲食関係・お土産屋さんを含めて、
それらに関連して紐づけされる多くの会社やお店が危機に瀕しています。
海外専門の旅行会社やインバンド専門のホテルは、
前年同月比売上が”ゼロ”と言うところも数多くあります。
日本の観光産業の消費額は26.1兆円規模
そのうちインバンドは4.5兆円
海外旅行は1.1兆円あったわけです。
人を閉じ込めてしまう感染症は多くの観光産業の消費を奪ってしまいました。
緩和と自粛を繰り返しながら、何とかワクチンや治療薬が出来るまで、
持続できる会社がどれだけあるか?・・・そう多くはない筈です。
先ほどの観光産業の消費額は26.1兆円ですが、これは直接効果です。
波及効果を含めるとGDP総額の10%となります。
雇用も全体の10分の1となります。
2018年度のGDP総額は536兆円、その10%と
換算すると直接・関節波及効果も含めて約54兆円規模の
大半が失われてしまいます。
この波及効果には税金も含まれます。
当然、直接関わる経費だけではく、お洒落して出かける為の
アパレル消費やお土産代、現地での食事や美術館や様々な
施設への入場料も含まれます。
いつ終息するかは、誰にも分かりません。
だからこそウィズコロナで出来る事を探すしかありません。
現状をみても、ある程度自粛すれば、規制が緩和されます。
海外は難しいとしても観光産業の国内消費は20兆円規模あるわけです。
鎖国時代の江戸時代でも多くの宿場町が栄えていました。
規制緩和に於いて、先ずは地域が緩和されるとなると、
地元の人々をお客様にすれば良いのです。
タダでさえ、コロナ疲れや鬱で疲弊している方々が多くいる
のであれば、リラックスしてゆっくり楽しんで貰う。
勿論、安心・安全対策を行いながらです。
家庭では味わえない非日常の世界を創り出せば良いのです。
お洒落して美味しいものを食べて大浴場に二人切りでゆったり浸かる。
特別な空間と時間を創り出せば良いのです。
海外に行けないなら、最新の映像技術を駆使してバーチャルな
海外旅行体験を格安で提供する。
それが切っ掛けとなって終息後に繋がる筈です。
また、抗体検査を行い「抗体パスポート」を発行して
抗体がある人は海外への渡航を速やかに解禁する事も必要です。
当然、企業側も未来を創るビジネスコンテンツを考えて
行かなければなりません。
今までの様に、人気が高い国・地域のディスティネーション(目的地)を
他社と同じ様に企画して価格だけで競争するようなツアー商品では
これからは勝負出来ません。
どこも、考えないような顧客満足度が高い商品企画が必要です。
真似ではなく、「こと」体験で記録でなく、
記憶に残る価値ある旅の提案力が問われます。
また、ビジネスカテゴリーをインバンドだけ、国内だけ、
海外だけとかではなく、シェアを分散する事でリスクを
軽減しなければなりません。
また、今までの様に多くの人材と多くの店舗を使っての販売ではコストが上がります。
人海戦術ではなく、また一方通行的なOTA(オンライントラベルエージェント)と
言う事を更に踏み込んで双方向からマルチな360度拡げる多方面双方向的な
形に進めて行く事も必要です。
どの産業も、今回の事で過去の成功事例を含めて見直す時期に来てるのです。
陸地に食べ物がなくなったから飢え死にするのを待つのか?
海に出て潜ってみれば、そこに海藻という食料を見つけて
生きていく事が可能になるのか?
これからが私たちにとっての新たな見極めの時代です。