アサーション(主張)しない権利とは
心理学で言う「アサーション(assertion)」とは
「自分も相手も大切にしながら、自分の意見・気持ち・権利を率直かつ適切に表現すること」と定義されています
つまり、攻撃的でも受け身でもなく、自己表現をバランスよく行う行為のことを指します
生まれながらにして誰もが持っている 自己表現の権利(基本的人権)をアサーション権と言いますが、具体的には、以下の5つの権利があります。
【アサーション権】
■アサーション権1
私たちは誰もがアサーション権を持っている
■アサーション権2
私たちは誰からも尊重され、大切にしてもらう権利がある
■アサーション権3
私たちは自分の行動を決める権利がある
■アサーション権4
私たちは誰でも過ちをし、それに責任を持つ権利がある
■アサーション権5
私たちは誰でもアサーションしない権利をもっている
アサーション権の1~4は、理解しやすいと考えられますが
アサーションをテーマに研修を行っていると
アサーション権5の“アサーションしない権利”についてよく質問を受けます
「自己主張しないとストレスが溜まるのではないですか?」
「自己を主張しないと自分の意見が相手に伝わらないのでは?」
「自己を主張すべきだと親からも教えられてきましたが・・・」
などなど
今回は、少し分かりにくいアサーションしない権利について解説しましょう
先ず第一にアサーションしないことは
「逃げ」ではなく「意識的な自己決定」であるということだと考えると理解しやすいでしょう
言い換えれば、自分の意志で主張しないことを自由に選べる権利とも言えます
アサーションは「自己選択と自己責任」を基本とします
したがって、状況を判断した上で
- 今ここで発言すると相手を傷つけるかもしれない
- 感情的になっているから、少し時間を置いてから話したい
- この話題は自分にとって踏み込みたくない領域だ
- 自分の意見を言っても、今は建設的な話にならないと感じる
こうした場合に、自分の意思で「言わない」ことを選ぶのも、立派なアサーティブな行動です
具体的な「アサーションしない権利」を行使するケース例として
① 職場でのケース
上司から方針について意見を求められたが、まだ情報が足りず判断できない。
→「少し考えてからお伝えしたいので、後ほどでもよろしいですか?」と回答する。
(=今は発言しないが、主体的に判断している)
② 友人関係のケース
友人が悩みを話しているとき、自分の意見を言うと相手が余計に落ち込みそうだと感じた。
→「今はただ聞いているね」と伝え、アドバイスは控える。
③ 家族間のケース
家族の中で政治・宗教の話題になった。
→自分の考えを話すと感情的な対立になると判断し、「この話題はやめておこう」と沈黙を選ぶ。
④ 感情が高ぶっているとき
感情的になっている自分に気づき、「今話すときつい言い方をしてしまいそう」と思った。
→「少し落ち着いてから話したい」と言って距離を取る。
このように
自分と相手を守り、適切なタイミング・方法で表現するための権利として
アサーションしない権利を使うことも良い選択の一つとなることを理解していただくと
自分も相手もストレスを感じず
適切にコミュニケーションをはかることが可能となります
他者とのコミュニケーションに対して不安やストレスを感じず
相手も自分も大切にし自己表現するために
場面に応じて適切に“アサーションしない権利”を自由に行使することも行ってみましょう
