「貿易戦争犠牲者は一般市民」
「貿易戦争犠牲者は一般市民」 2018年10月号
米中貿易戦争が激しさを増し、お互いに制裁・報復を繰り返しています。
交渉の可能性は残しつつも収束の兆しは見えません。
このまま続けば米中の中小企業や小売業に追加関税で生じたコストを補える
体力はありません。その結果、末端商品である生活必需品や食料などが値上げ
され、犠牲になるのは一般市民です。
あらゆる戦争の犠牲者は一般市民です。
アメリカは(売る)輸出よりも、(買う)輸入が多く、長年続く貿易赤字に
苦しんでいます。更にトランプ大統領は、中間選挙を間近に控えて、強い
アメリカ(アメリカ・ファースト)を強調したい思惑があります。
トランプ大統領の支持者は、製造業や生産者の人々が多く、自分たちが恵まれない
のは、安い輸入品が多くあるから、自分たちが生産したものが売れないのだと言う
苦い思いがあります。
貿易赤字最大対象国の中国に何だかんだと理由を付けて
制裁措置として追加関税を発動しています。
世界の製造国の中国からの輸入品の金額が上がります。
消費者は高いものは買いません。
そうすると同じものを作っている国内の商品が売れます。
輸入が減り、国内商品が売れれば国内の生産者やメーカーにとってはハッピーだと
思われますが、事はそんなに簡単な事ではありません。
なぜ、輸入品が売れていたのか?
それは国内製品が高かったからです。
消費者は、価格・品質・容量等を比較して好みの商品を購入するという
自由に選択する権利があります。
また、中国は世界の最大の消費国でもあります。
中国も報復措置で関税をかけていけば、アメリカの輸出量が減り、困るのはアメリカの企業です。
この貿易戦争は米中だけの問題ではありません。日本にも迫っています。
ご存知の様に、アメリカの対貿易赤字額1位が中国、2位がEU、3位がメキシコで4位が日本です。
2017年度の日本からアメリカへの輸出額が約15兆円、対して輸入額は約8兆円です。
アメリカにしてみれば、約7兆円の赤字です。
アメリカに旅行いけば、至る所で日本車を見る事が出来ます。
また、家電製品も日本製のブランドを沢山見る事ができます。
さて、日本では、アメリカ製品はどうでしょうか?
街を走る輸入車で多く見かける事が出来るのはドイツ車が多いですね。
アメリカ車は少ないような気がします。
・・・昨今は赤身肉の熟成ステーキがブームになり、アメリカ産の輸入肉を
食べる様になっていますが、7兆円の赤字解消には程遠いです。
なぜ、アメリカの製品が日本で売れないのか?
日本の生活実態に見合わない・・・大きな車や燃費の悪い車は敬遠されるのは当然です。
遺伝子組み換えの農作物は心配です。
デコラティブなモノは日本の住宅には・・・どうかなぁ?
モノを売る為には、購入者の欲しいと言う要求レベルを満たす事が必要です。
それは単に価格だけではなく、品質・機能・デザイン等を含めて、安心・安全が担保されたものです。
日米の貿易交渉に於いても、単純に関税措置の問題や門戸開放だけではありません。
ジェット機やミサイル等の軍事関連の購入を進められても困ります。
とにかく、一般市民レベルの生活に根付いたところで解決策を見出して欲しいものです。
日本側も変えなければいけないところは沢山あります。
特に大手企業は下請け企業や取引先企業に厳しい値引きだけを要求して自社の利益を
最大化して内部留保に努めています。
先ずは社員の給与を上げる。
儲けた利益を設備や新規事業の投資に回してお金が回る様にしなければ
皆がウィンウィンの関係を築くことが出来ません。
もちろん、給与が上がれば映画館でハリウッド映画を鑑賞し、ディナーにアンガス牛の
どでかいステーキと付け合わせのアイダホポテトにトウモロコシ、ちょっと贅沢してワインは
ナパバレーのオーパスワン。デザートにアメリカンチェリーを食べて至福に時間を過ごして下さい。
月に一度、多くの人々が行えば、アメリカの対日貿易赤字を少しは減らしてくれるかもです。
最後に、ご存知ですか?
保護主義的な貿易施策によって第一世界大戦がはじまったのです。
それを元にWTO(世界貿易機関)が出来て貿易の自由化を促進しています。
どんな戦争も被害の犠牲者は一般市民です。
・・それを忘れない事です。