メンバーの自己肯定感を高める
先日
研修にご参加いただいた中堅社員の方から
後輩育成について次のようなご相談を受けました
後輩と話をしていると
「仕事に対するモチベーションはありません」
「やりたいことがわからない」
「こういう仕事は避けたい」
といった話が返ってきました
自分も
「まあ そんな感じよねぇ」と返事をする具合で
上手くアドバイスができずにいます
また
褒めた時でも
「他の人と比べて自分は・・・」といった空気感で
後輩は自己肯定感が低いと感じています
なんとか後輩が自分に自信をもって仕事をしてほしいと考えていますが
どうしたらよいでしょうか?
とのことでした
このお話を伺って
後輩思いの先輩を持たれてこの後輩の方は幸せだなぁという感想をもちました
後輩の方は
今は実感できないかもしれませんが
自分に関心をもって真剣に応援してくれる先輩の気持ちを
いつかその後輩の方も理解する日が来ると期待しています
私も若い世代の方々への研修をしていますが
多くの方から
「やりたいことがわからない」
「夢なんてもてない」
「なるべく楽で苦労のない人生をおくりたい」
「自分は、ほかの人より劣っている」
「できれば努力したくない」
など
ネガティブとも思える言葉が聞こえてくることも少なくありません
しかし
彼らがやる気がないかというとそうでもなく
彼ら自身でも気づいていないエネルギーや
多くの可能性を秘めています
そのやり方がわからず
諦めたような表現になったり
自分の可能性に自分で蓋をするような言葉が出ていると考えます
つまり
そのやり方がわかれば
よりその人にとって好ましい人生を
自分で切り開くことができるのではないかと考え
研修を通して応援をしています
私が研修を通してお伝えしている
他者の自己肯定感を高めるための方法を
この先輩と後輩の事例に添って
お示ししますので参考にしていただければ幸いです
◆結果だけではなく存在自体を承認する(全承認)
自己肯定感は、幸せになるための基盤となるものです。自己肯定感が低いと「自分はだめだ」「自分はできない」「自分なんてたいしたことない」と考えがちになり、思考が行動に影響を与えるためどんな人もこの考え方では上手くいかない可能性を自ら高めてしまいます。
しかし、「もっと前向きにポジティブに考えて行動して」と伝えても本人が実感しない限り簡単に自己肯定感は高まりませんし、元来人間は、人からコントロールされたくないと思っているので、例え良いことでも無理強いされると反発から反動的な行動に出てしまう人も少なくありません。
先ず、私に相談なさった方の後輩は、先輩に対して「モチベーションはない」、「やりたいことがわからない」、「こういう仕事は避けたい」と本音で話していること自体素晴らしいと思います。つまり、先輩に対して信頼をなさり心を開いて本音で話しているのだと思います。
そして、先輩も先ず「まあ そんな感じよね」と後輩の方の話を受け止めていることが、正直に考えを示してくれた後輩に対する存在承認になっていて心理学上も良い対応だと考えます。
相手が、こちらの求める答えでなくとも本音で話してくれたら「正直に話してくれてありがとう」「人間、そんな気持ちになることも当然あるよね」と受け止めることが相手を存在を認め受け入れることにつながり肯定感を高める第一歩となります。
◆相手の存在を承認し自己肯定感を高めるための働きかけ
1.質の高い挨拶の励行
相手の目を見て、感謝や労いの言葉をかけることが重要です。短い時間で相手の存在を認め、今日も仕事に出てきてくれたことや今日も一日最後まで仕事をしてくれたことを心から承認することで相手は自分の存在に対して「仲間は自分の存在を大切にしてくれている」と感じ段階的に自己肯定感を高めていきます。
2.話しやすい空気感を醸成し心理的安全性を担保する
人間は、言語化することで自分の現状や思い、大切にしていることに気づき思考を整理することができ、結果として行動へつなげやすくなります。愚痴や不満もエネルギーですので言葉にして発することから、好ましいエネルギーへと変換していく可能性を広げるきっかけとなります。まずは、否定せず肯定的な態度や表情で相手が話し易い空気を醸成することが重要です。「そんな風に考えているんだ。話してくれてありがとう。」と伝えていくことで発言を相手が大切にしてくれることに気づき自己肯定感が高まります。こちらが相手に感謝すると相手からの感謝も返ってきやすくなる感謝の返報性という心理が働きます。また、こちらが相手の話を真剣に聴けば聴くほど、相手もこちらの話を聴きたくなります。つまり、先輩の指導や助言を後輩の方が積極的に聴こうという思いにつながっていくということです。
3.チームの目的や有益性、本人の仕事の有益性を言語化して伝える
そもそも多くの仕事は、他者の役に立ち、より良い社会の実現のためになくてはならないものです。また、そこで毎日、頑張っていろいろな課題解決に向けて努力なさる方々のお仕事は大変尊いものです。仕事をしていて自分の組織の有益性や自分自身の有益性(人の役にたっていること)を認識できなければ、モチベーションは下がります。会社や後輩の方の仕事が世の中にどのような役に立っているのかを繰り返し伝えていくことで後輩の方も自身の仕事に対して肯定感を持ちモチベーションを高めていくことにつながっていきます。但し後輩の方の納得感が必要ですので、相手を観察し心に響く方法を模索し焦らず伝え続けることが重要です。すぐに変化がでなくてもいつか響くことにつながっていきます。
4.小さな承認を積み重ねていく
後輩の方の言動を細かく観察し、良い意見を言ったら「その考え素晴らしいね」や少しでも良い行動を起こしたら「その行動すばらしいね」などと意識や行動を承認して下さい。
自己肯定感が低い人は、「大きな成果を生まなければ自分は認めてもらえない」と考えるために行動する前に「そんな凄いことは自分にはできない」と諦めてしまう傾向があります。しかし、実際には、小さな意識変化や行動変化が未来を大きく開いていきます。本人が自身を承認できないのであれば、周りが承認し「意識」→「行動」→「プロセス」→「結果(成果)」へと導いていくと良いでしょう。他者から承認を受けることで自己肯定感を高めていくことができます。
既に皆さんお取り組になっていらっしゃることも多いと思いますが、少しでもお役に立てればと考え私の思いを記させていただきました。最後まで読んで頂きありがとうございます。